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公益社団法人
全国宅地擁壁技術協会
〒101-0044
東京都千代田区鍛冶町1丁目6番16号
神田渡辺ビル7階
 

八王子みなみ野シティにおける

 

八王子みなみ野シティにおける 宅地擁壁のデザイン

八王子みなみ野シティにおける 宅地擁壁のデザイン
 
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住宅・都市整備公団 宅地擁璧研究会
             森下毅-
 
 ●原点はそのまちらしさの追求
八王子みなみ野シティは、東京西部の八王子市市街より南へ2kmほどに位置する緑豊かな多摩丘陵に誕生しつつある大規模ニュータウンである。〔図一1〕
 住都公団が土地区画整理事業により開発を進める、開発面積約400ha、計画人口約28,000人という首都圏最大級のプロジェクトである。
 (八王子みなみ野シティ)のまちづくりコンセプトは『アーバンビレッジ』。
 計画的に都市の背骨として残した豊かな里山緑地を中心に、地域の自然や豊かな風土を身近に感じながらゆとりある都市生活を快適に過ごすことのできる街を目指している。
 この、まちづくりコンセプトは土地利用計画からオープンスペースのデザインそして、街路・住宅・宅地外構などの街並み景観へと落とし込まれ、金太郎飴のように全ての切り口で表現されることが誰にも解りやすいし、強いタウンアイデンティティを形作るための理想となる。〔図-2〕
 そこで、里性と街性とが融合するまちである『みなみ野』にふさわしい宅地擁壁のデザインとはどんなものなのか。また、里性と街性それぞれの界隈性をどのように特色づけていくか。検討はそこから出発した。
   
●8つのビレッジをゾーニング
 みなみ野シティは丘陵地に立地することから丘、谷戸、川で分割された地形上の特色を本来もっていた。
 公園・緑地などのオープンスペースは、この地形や景観的な特性をアーバンビレッジにふさわしく活用するために、尾根や斜面の緑、谷戸の自然を上手に保全し、まちの環境軸として連続させつつ五山・五丘・三渓・一流(五つの里山と五つのヒルトップと三つの谷戸と一筋の河川)というストーリー性を持った計画となっている。〔図-3〕
 これは環境共生都市というもう一つの切り口にも迫る意図があるのだが、この土地利用上の骨格によって地区が地形的にまた景域的に7つの領域に分けられることが読み取られた。
 これに、最もアーバニティの高いJR横浜線新駅を中心とするタウンセンター街区を加えて、みなみ野シティを8つのビレッジにゾーニングしてみた。
 すると、そこには極めてデザインしやすい適度な領域感とそれぞれの地形に応じた界隈としての雰囲気が醸し出されるであろうことに気づいたのである。
 すなわち、川沿いはしっとりとした落ち着きあるイメージでまとめあげるのが相応しいとか、丘の街区は明るい陽射しの映える軽くてナチュラルな色調が里の丘にはあいそうだとか、幹線街路沿いやセンターは少し強いトーンで変化を付けるのが街性にあうとか、みなみ野のまちをデザインする糸口が見出せたのである。
 また、丘、谷のそれぞれのエリア内でも線地を内包した街区では、緑に沿う部分では里性を追求したつくりを、そして、コミュニティ道路や学枚に沿う区間では街性を意識した変化をつけることもあわせて配慮することとした。
   
●オリジナル
  PCL(プレキャストL型)
            擦壁の開発
 さて、みなみ野シティは坂の街でもある。
 従って当然、擁壁のまちとなる。
 宅地擁壁の外観をどう処理するかが里性、街性のイメージをかたちづくる決め手ともなる。
 そこで、PCLの表面にどのような化粧をはどこすかが検討された。
 化粧型枠、吹き付け塗装、洗い出し仕上げ、本石等の打ち込み等、在来の製品が検討されたが、どれもがこれぞみなみ野のデザインコンセプトに適うという決め手に欠けるか、コスト面や高さ50cmから3mを越えるというまちまちの規格で、しかも一時期に大量に供給されなければならないという、生産ペースでの問題が指摘された。
 ここで、ショットブラストによる、つつき仕上げを新たに検討することとなった。
 ショットブラスト仕上げとは、もじどうり細かな鉄球をコンクリートの仕上げ面に吹き付け、細かなつつき仕上げを表面に施すもので、一般にコンクリート平板等に用いられている仕上げ法である。ナチュラルな色調でぬくもり感があり、地味ではあるがコンクリートの生地や骨材本来の持ち味を引き出せる仕上げ法の一つである。
 
 
●みなみ野シティの
      ピレッジを
       ・ 表現する仕上げ
 ことに、里性という素朴なぬくもりを表現でき、コストパフォーマンスに叶い、ある程度の量産性がある仕上げの選択と言う、なんとも難しい注文にこたえられるのがこのショットブラストではないかと考えられた。
 里性のイメージの中では、擁壁は家並の色以上に主張せず、ベーシックなアースカラーで、擁壁と言うよりは土っぽい塀のような存在で、まちの「地」を構成するものであり、他の素材との馴染みがよく、かつまた、後に住まい手が自らの個性で、一部に味付けをしても違和感の無い仕上げであるべきだと考えられた。
 また、表面の数センチの骨材を様々な天然石に変えれば、多彩な自然の色合いとテクスチェアーを設定することができる。
 つまり、8つのビレッジにあわせて、それぞれスタイルを変えることが可能となる。
 そんなことからこのショット仕上げが候補となったが、生産ラインには平面を加工するマシンしか世の中に無いことが解かった。
 
 
●生産ラインの開発
 そんなわけで、PCLの仕上げ面を寝かせてショットをかけなければならないが、大きいものでは3m以上もある擁壁を寝かせたり、起こした.りという動作を生産ラインで行い、しかも、巨大な面を均質に仕上げることなど、品質管理上や経済性から見てとても難しいということになった。
 そこで、コンクリート製品としても本来、在ってしかるべきであろうこの化粧法をなんとか実現できないかということで、(社)全国宅地擁壁技術協会に検討を依頼した。
 その結果、協会側のご努力により、技術的に製品開発が可能なメーカーが数社あることがわかった。
 いずれも、擁壁を立てたままの状態で巨大面にショットを施す技術の開発、型枠の新調、生産ラインやストックヤードの確保など、かなりの企業努力を必要とするにもかかわらず意欲的な社である。
 
 
●ニュータウンに
      溶け込むショットPCL
 はたして、1年余りを費やし、みなみ野シティの8っのビレッジに対応したオリジナル仕様の6タイプの化粧擁壁の試作品がそれぞれ5社から擁壁協会を通じて届けられた。
 その後、各社の製品の完成度を高めるためのテストが独自に繰り返され製品が出来上がった。
 現在、来春に街開きをひかえた、八王子みなみ野シティの約40haのエリヤで、背割りを除き、区画道路や緑地に面する部分にこれらの製品が採用され、完成した約240戸の家並と住宅外構に溶け込んで、まさに、もくろみどうりの効果を見せている。
 来年の4月には、街の賑わいの中に同化し始め、さらに月日が経てばエイジングも加わり、きっと、みなみ野らしい里性、街性の風景の「地」となって生き続けてくれることだろう。
 
 
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〔写真-1〕化粧L型使用例
 
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〔写真-3〕那智黒(男性タイプ)
 
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〔写真-2〕錆御影(男性タイプ)
 
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〔写真-4〕茶玉・錆(男性タイプ)
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