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公益社団法人
全国宅地擁壁技術協会
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新しい街の舞台に立

 

新しい街の舞台に立つあおば山の手台のホリゾント壁

新しい街の舞台に立つあおば山の手台のホリゾント壁
 
住宅・都市整備公団
宅地擁壁研究会
小泉豊信
   
1.あおば山の手台
 
 「あおば山の手台」は東京都心から南西に約16km、横浜市の北西30k皿、横浜中心部から北西に約端青葉区に位置する、当公団が施行した面積87.6ha・計画人口11,000人のニュータウンである。〔図1〕事業地区に隣接して東急こどもの国線こどもの国駅があり、また、東急田園都市線・JR横浜線両線の長津田駅及び小田急線鶴川駅までバスで約15分の距離にあるなど、交通の利便に恵まれた地区である。〔図2〕地権者の方々を始めとする関係皆様方のご協力を得ながら事業を進めてまいり、昭和58年の区画整理事業認可から13年の期間を経て、平成8年9月に換地処分を迎えることができた。本事業地の周辺地域は、もともと小さな起伏が続く丘陵地であり、狭い区域をとってみても大きな比高差を持つ地形上の特徴を有している地域ということができる。
 
 
〔図1〕
 
〔図2〕
   
ほぼ短辺0.5km長辺1.5kmの広がりである本事業区域にしてみても、40m以上の高低差を抱えるとともに、尾根と谷戸がいくつも複雑に入り組んだ現況地形であったが、本事業により、西側の町田市との都県境の尾根部から東側の鶴見川水系奈良川へ下る傾斜を持つ造成地となった。周辺は、地区東側に上記こどもの国を包含する風致地区が近接し、地区南側も市街化調整区域の緑が広がるなど、自然環境にも恵まれた地区であると言えよう。〔写真1〕
 土地利用計画は〔図3〕のとおりであるが、上記のような状況の中、この事業地域元々の自然環境を新しい街の中に受け継ぐことを目指し、地区西側尾根部現況林の計画住宅用地等内保全、地区隣境南側現況林わきのせせらぎ整備等とともに、面積3.8haの本地区最大の公園であるならやま公園については、その中に現況の里山をまるまる活かす計画とすることとした。表題において「ホリゾント壁」と称した今回紹介する擁壁は、このならやま公園内に整備したものである。
 
 
〔写真1〕
 
〔図3〕
   
2.ならやま公園
 
 ならやま公園はあおば山の手台のほぼ中央部に位置する地区公園である。小中学校や駅などを結んであおば山の手台を縦貫する地区の緑の中軸である歩行者専用道路に接しており、緑の拠点であるとともに歩行者空間の拠点であると位置づけられた公園である。また、北側は東急こどもの国線こどもの国駅前の商業用地に隣接するなど賑わいの拠点ともなる潜在的な特性を有している。一方、公園面積は上述のとおり地区公園としてはほほ標準と言える3.8haであるが、その中に現況の里山約1.9haを有しているため、地区公園に求められる要求を満たすためには様々な工夫を重ねる必要がある立地であったと言えよう。
 このような敷地条件のもと、ならやま公園の設計方針として、下記の2点を設定した。
 (1)現況林の保全と利用
 (2)多目的なレクリエーション利用のできる空間の確保
 このうち特に、3.8haの敷地で約1.9haが丘陵地形となっている本公園で、その周辺の平地にいかに「多目的なレクリエーション利用のできる空間を確保」するかが計画上の大さな課題となった。中小規模の広場空間はそれなりに確保できるものの、多目的な利用を想定した、ある程度の広がりをもつ空間整備が、造成上も課題となった。そういった中で、公園北側部分については、当初より造成計画上、公園内に大きな切土法面が生じてしまわざるを得なかったのであるが、あおば山の手台の賑わいの中心地である駅前商業地に面するという特性を考慮し、その賑わいを積極的に公園内に引き込む、公園内で最大規模の広場を計画することとした。〔図4〕
 
 
〔図4〕
   
そのため、全面広場を生み出すために当初計画よりも切土法面を後退させることとなり、広楊面に対して擁壁を生じざるを得ない状況となった。この擁壁を含む長大法面は、ややもすれば景観を損ねる施設ともなりかねないことから、計画・設計の検討を重ねる中で下記の3点の性格を持たせることとした。
  (1)街のシンボル
 長大法面は、強い性格を持つ景観を街の中に生じさせるものであることを意識し、街のシンボルとして愛称を付けてもらえるような質の高い整備を目指す一方、街を眺めることができる施設整備を行うこととする。
  (2)山の顔
 長大法面を単なる山の切断面の手当て・修復なのではなく、山の表情を表す顔を捉え、「台地の造形」と言える計画を目指す。
   (3)交流の場
 前面広場と一体となり、街の交流の場としての機能を果たし、時として、広場に対する舞台あるいは客席となったりする場となることを目指す。
 これらを基本方針とし、具体の施設内容を検討した結果、広場を客席空間と見立てた舞台を法面裾部分に整備し、法面下部の擁壁を舞台の背景壁=ホリゾント壁としてデザイン化することとした。これにより広場に対して違和感のない施設となることを目指したものである。また、擁壁上部の法面は現況里山の山頂まで登れる施設整備とし、広場および街を見渡せる展望広場を法面中腹及び山頂部に整備することとした。法面上については植栽により修景することで広場および公園外からの景観に配慮した。法面に向かってホリゾント壁右側には、休養スペースの拠点となる四阿を整備し、その上部は広場を見下ろす展望広場を整備することとした。最終的には、本ホリゾント壁は最大高さ6.8m、擁壁面積約300m2の規模となった。〔図5~8〕
 
 
〔図5〕
 
〔図6〕
 
〔図7〕
 
〔図8〕
   
3.構造・デザイン上のねらい
 
 本ホリゾント壁を設置する箇所の地質については自立する土丹層が全面に露出していたため、横浜市建築指導課との協議の結果、もたれ壁式構造とすることとなった。〔図9〕擁壁の材料としては、公園内の景観性を考慮して、自然石を用いることとした。それまでにも公園整備の過程では自然石による石積み擁壁が作られてきており、素材としてはニノ滝石を用い、野面積みとすることで現況林と非常になじみのよい景観を生み出していたのであるが、今回のホリゾント壁については、設置箇所が駅前商業施設に面する多目的広場という都市的雰囲気の強い場所であることから、公園の他の区域とは一味変え、シャープなイメージを演出することを目指し、雑割石の平積みを採用することとした。その時に注意を払ったことに、大面積の平積みの雑割石がもたらす単調感・圧迫感を出さないようにすることがあった。折角の自然素材を用い、1つ1つの石にはテクスチヤーの変化があったとしても、これだけの大面積のため遠景からの景観を考慮するとやはり圧迫感や素材の規格性による単調感が生じてしまい、公園内において景観性を損ねる施設となってしまう危惧があったからである。その解決策として考案したのが、アクセントとして着色陶板を雑割石の中に配置するというものであった。〔図9〕陶板の色彩にも注意を払い、複数の色を用いることとした。
 
 
〔図9〕
   
4.完成後
 
 以上のような検討を経て本ホリゾント壁は施工の運びとなった。
 当初心配していた長大切土面そのものが持つ景観上の阻害性は、法面下部を擁壁構造(ホリゾント壁)とし、上部を修景植栽法面とした2段構成としたこと、及び法面上に整備した展望広場或いはホリゾント壁脇に整備したピロティにより、却って特徴のある景観を生み出せたと考えている。〔写真2〕法面上を山頂に向けて直登する階段と展望広場は商業地内の歩行者専用道路にビスタが通っており、ならやま公園から駅前商業地との一体感が感じられる構造となっている。また、こどもの国方向及び地区西側都県境の緑地へも眺望が広がり、地区の自然環境を体感できるスペースとなっている。〔写真3〕
 また、この擁壁自体の圧迫感を解消することができたのは、擁壁を舞台施設と一体的に整備し、前面に規模の大きい多目的広場を設けたことによるのであろう。
 さらに、ホリゾント壁に配置した陶板は前述のような検討の結果、人工物でありながら雑割石によくなじんだデザインとなったと同時に、アクセントとしても効果が非常に高い仕上がりになったと考えている。〔写真4〕
 
 
〔写真2〕
 
〔写真3〕
 
〔写真4〕
   
5.終わりに
 
 
 「あおば山の手台」は平成8年9月に換地処分を迎えた訳であるが、住宅地としての熟成は今後更に深まっていくであろう。
 ならやま公園はこの街のほぼ中心に位置し、現況の里山を保全するとともに、駅前商業地に隣接するなど、地域コミュニティー形成のための重要な施設となる潜在性を十分に備えている。特に、駅前商業地側の多目的広場は、駅前商業地と一体化した重要な空間であり、住民の方々の手により様々な使われ方が今後されていくものと考えられる。この度整備した公園内の舞台およびホリゾント壁がイベント等活発に利用され、地域コミュニティー形成の一助となる施設となることを願っている。〔写真5〕
 
 
〔写真5〕
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